2008年7月30日水曜日

図書カードを忘れても だいじょうぶ

 「○○くんの住所はわかる?わかんないの。じゃ電話番号は?」

 「○△◇-▲×□◎」

 「もう10冊借りているよ。本を返さないと今日は借りられないよ」

 「◎◎くんの電話番号は?わからないの?(名字の)さかは(漢字だと)どんな字」

 「つちへんのさか(坂)」

 「つちへんの坂じゃないみたいだよ???」

 こんなやりとりが交わされていたのは錦図書館の図書貸し出しカウンター。

 どうやら本を借りにきた4人の子どもたちが図書カードを忘れてしまったのかもっていないようで、コンピューターで検索している模様。

 しばらく、子どもたちとベテランの図書館員のやさしいおじさんの『おもしろいやりとり』が続いた後、子どもたちはお目当ての絵本をかりて無事に帰っていきました。

 夏休みで子どもの利用が多い図書館では些細な日常的な出来事かもしれませんが、こんなあたたかい風景を見ていると心が癒されます。

 その地域のことをよく知っているベテランの専門図書館員がいることは頼もしいですよね。

 指定管理者制度は図書館事業にはなじまないと感じた真夏の一幕。やっぱり直営の中での改革が必要ということを改めて思います。

 写真は『赤毛のアン』関連の本の展示コーナー。 夏休みの図書館はクーラーも効いていて極楽ですよ。

2008年7月24日木曜日

『魂(ソウル)のゆくえ』が新版として復活

 以前にホームページのほうで、絶版ながら紹介したピーター・バラカン著の『魂(ソウル)のゆくえ』が「アステルパブリッシング」から装いも新たに復刊しました。時代に合わせて加筆や書き換えがあり、ソウルミュージックの名盤などの179枚の最新のCDガイドが新たに加わっていますが、新潮文庫の原版同様にソウルミュージックの教科書として決定版といえる名著であることは変わりありません。今は亡きソウルの帝王(ゴットファーザー)JB­=ジェイムズ・ブラウンがシャウトする姿が表紙を飾っています。

 まさに【Soul is nothing but a feeling .】を教えてくれる本です。

ピーター・バラカン『魂(ソウル)のゆくえ』(ARTES=アステルパブリッシング) 定価:本体1800円(税別)【写真中央】

 
 以下は、ホームページに以前書いた拙文です。ご関心がある方は新版を書店で手にとって見てください。


 「魂(ソウル)のゆくえ」は著者のピーター・バラカンさんが、まえがきで「なぜソウルなのか。なんかよく分からないけれど、私自身は一番解放される音楽だから、その開放感を
できるだけたくさんの人と分かち合いたい」と語っているように、ソウル・ミュージックをこよなく愛している著者がソウル前史としてのゴスペルや50年代から80年代までの黒人音楽を白人音楽とのクロスオーバー(相互影響)や公民権運動やベトナム戦争の歴史などの背景とともに解説している名著。ゴキゲンなソウルやリズム&ブルース、開放感をあたえてくれるゴスペルなどの119枚のレコード・CDの推奨リストもあり、ソウルのことを知らない人におすすめの書です。

 レイ・チャールズ、サム・クック、ジェイムズ・ブラウン、スモーキー・ロビンソン、オーティス・レディング、ウィルソン・ピケット、サム&デイヴ、パーシー・スレッジ、アリーサ・フランクリン、アル・グリーン、アイズリー・ブラザース、ジミ・ヘンドリックス、スライ&ザ・ファミリー・ストーン、マーヴィン・ゲイ、スティーヴィー・ワンダー、カーティス・メイフィールド、ドニーハサウェイ、ボビー・ウォマックなどなどのエピソードや音楽性が解説されていますが、これもピカイチでわかりやすい内容になっています。

 バラカンさんは「多分私がソウルを感じる感じないというのは結局はゴスペル・ミュージックからくる感情の高揚があるかないかだと思う」「ソウルとは『魂』という意味の言葉なのだが、聞き手の魂を興奮させ、別の次元へ連れて行くゴスペル的部分がソウル・ミュージックには必要とされているのではないだろうか」と考察。ベトナム戦争の敗戦やウォーターゲート事件などが70年代半ばのアメリカに、ただ娯楽だけを追い求めるだけのシニカルな時代の雰囲気を生み、何も考えずにただ踊ればいいといったディスコが登場。それが人をのせるための曲を作るのではなく、休まず踊らせるためにどういう曲を作ったらいいかという商売の発想に変わり、1分間に何ビートが心臓の鼓動と近くて気持ちいいというような型にはまった曲作りとなり、このディスコ・ブームがソウルの息を止めるものだったと解いている。ボクもバラカンさんと同じ考え。なぜか70年代半ば以降のディスコサウンドには心からのれません。でもソウルは本当に死んでしまったのでしょうか。

 そしてバラカンさんは『魂のゆくえ』について語ります。「ソウルが魂ということなら、音楽の形が変わっても永遠に生き続けるものの筈だ」とソウル・ミュージック以外にソウルを感じさせる音楽としてレゲエのボブ・マーリーやトゥーツ・ヒバートやワールド・ミュージックと言っていいと思いますが、セネガルのユースー・ンドゥールやマリのサリフ・ケイタなどを挙げています。ちなみにボクが今ソウルを感じてしまう歌手はウルフルズのトータス松本さんに沖縄の歌手夏川りみさんというところ、またソウル・フラワー・モノノケ・サミット(ソウル・フラワー・ユニオン)の中川敬さんにも感じます。皆さんにはソウルを感じる歌い手はいますか?とにかくこの本からは現在も大きな影響を受け続けています。

 まさに【Soul is nothing but a feeling .】ということを教えてくれます。

 この本は残念ながら絶版状態。一部のファンからの復刊を求める声もあがっているようですが、ぜひ復刊してもらいたいと思います。ご関心のある方は図書館などで探して下さい。はじめから絶版の本を紹介してしまうなんて少し間が抜けていますが、すばらしい本ですのでご容赦を。(2004年12月記)