2012年3月10日土曜日

東京大空襲と『猫は生きている』




約300機の重爆撃機B29から落とされた焼夷弾の雨が東京の下町を襲い、10万人以上が、犠牲になった東京大空襲から67年。

実際に空襲を体験した人もだんだん少なくなってきています。

東京大空襲を体験した語りべもいなくなってしまう日も近いでしょう。

戦争の悲惨さ、惨さを後世に伝え、二度と同じ過ちを繰り返してはいけない、そんな思いが込められた絵本があります。

昌男と妹の光代そしてまだ赤ん坊のチイちゃんとおかあさんが住む東京の下町の家のえんの下に住みついたのら猫たち。そのおかあさん猫の“稲妻”とその子どもであるひい吉、ふう吉、みい吉、よう吉の四匹の子猫が昌男の家族たちとともに1945年3月10日の東京大空襲に襲われ、巻き込まれてしまう物語。

『猫は生きている』です。

『猫は生きている』は作者の早乙女勝元さんが「あの戦争中の私たちの姿を、真実ありのまま、幼い子どもたちにつたえる本はないものでしょうか」と東京大空襲を体験したおかあさんたちから質問を受けて、「幼い子どもたちにも、あの戦争を知る上でなんらかの手がかりがなくちゃ」と思って、書かれたものです。

この本が書かれたのは1973年で、ベトナム戦争の真っ只中。米軍の重爆撃機B52によるナパーム弾の雨はベトナムの子どもたちにも降り注ぎ、多くの子どもたちが命を奪われている中でした。

絵を担当したのは、当時「ベトナムの子どもたちを支援する会」でベトナムの子どもたちを支援していた画家の田島征三さん。田島さんは幼いころに大阪の堺で過ごしていたそうですが、米軍機の機銃掃射にあった経験を持ち、疎開をしたために大阪堺への空襲にあわずに生き延びた戦中派です。

そんな二人の魂がこもった作品。いのちの大切さを感じさせてくれます。

しかし、戦争をしてはいけないということを訴える“古典”とも言えるこの絵本も、今では、大きな本屋の絵本のコーナーに置いてあることはほとんどありません。立川の書店でも戦争を扱った絵本にはなかなかお目にかからないという感じです。

戦争の記憶が薄れ、風化していく、これも時代なのかなとも思いますが、絵本や児童文学は、“未来の大人たちへの本”でもあります

多くのおかあさん、おとうさんたちが、この本を子どもたちに読んでくれたらと思います。

また、(子どものころにこの本を読まなかった)大人にも読んでほしい作品です。

(立川市の中央図書館にはあるはずです。)

私も多分この本を読み聞かせてもらった経験があり、そういったことが原体験になって、大学では日本近現代史を専攻することになりました。

(私がもっているのは1975年版で「平和の力に 早乙女勝元」と早乙女さんのサインがあります。今ではこの本を買ってくれた母に感謝してます。)

『猫は生きている』  作: 早乙女 勝元  絵: 田島 征三  出版社:理論社  税込価格:¥1,365(本体価格:¥1,300) 発行日:1973年
お薦めです。